限界利益

限界利益とは何か?【左手に5Sを!右手に限界利益を!】

Q)よく講演やセミナーで「限界利益」という言葉をお使いになりますが、その言葉の意味と重要性について教えてください。

A)逆に私のほうから質問させて下さい。企業には、「仕事があってもなくても必要な金額がある」ということはわかりますか?

Q)・・・・。ええと、仕事がなければ「材料代」や「運賃」など払わなくていいわけですから、そうしたお金は必要ないんじゃないですか?

A)そうですね。確かに仕事がなければ支払いは発生しませんから、お金はいりませんね。では、お給料はどうですかね?

Q)ええと、「給料」は会社が出してくれるものですから、仕事があるなしとは直接関係ないんじゃないでしょうか?

A)では、会社は「給料」をどのようにして支払っているんでしょう?社長の貯金を切り崩して払っているんでしょうか?銀行からお金を借りて払っているんでしょうか?

Q)いや、会社は利益を出しているので、その利益から「給料」を支払っています。

A)はい、そうですね。会社は利益から「給料」を払っているわけですが、では利益が出なかったときはどうでしょう?

Q)・・・・・、ええと、それでも「給料」は支払わなければならないと思います。たしか、法律でもそう決まっているんじゃないでしょうか・・・・。

A)そうです。会社は利益が出ても出なくても「給料」を支払わなければいけませんね。つまり「仕事があってもなくても給料は必要な金額】ということになりますね。

Q)確かに、仕事の有無とは無関係ですね。

A)では、会社が入っているビルの家賃はどうでしょうか?

Q)それも、仕事があってもなくても必要です。

A)はい。実は会社には【仕事があってもなくても必要な金額】というものがあります。たとえば、今の「給与」「賞与」であり、他に「家賃・地代」「光熱費」「(本社系)リース」「車両関係(保険・車検費)」「一般管理費」などがその金額の対象になります。

Q)それは、一般的によく耳にする「固定費」というものでしょうか?

A)そうです。一般的にはその「固定費」に相当しますが、マネジメント(経営)からするとそれだけでは足りませんね。多くの中小企業は金融機関から「借入」をしていますから、その返済すべき金額もその「固定費」に繰り入れておかなければなりません。その他にも必要な金額があるのですが、何か思いつきますか?

Q)はぁ、その他に何かまだあるんでしょうか?

A)会社というのは、法人と呼ばれていますから、人と同じで「税金」を納めなければなりません。「法人税」「法人地方税」「法人事業税」「消費税」などが納めなければならない金額になります。他にも「固定資産税」や「償却資産税」などが掛かることがあります。

Q)そんなにたくさん税金の種類があるんですか。

A)はい。会社を経営するのはなかなか大変ですね。さて、一般的な会計の概念ではなく、会社を運営していくという「マネジメント」の立場から考えると、先ほどのさまざまな「固定費」と「借入返済」と「税金」が必要だということがわかりますね。

Q)そうですね。意外と会社ってお金がいるんですね・・・。

A)それでは、今言った金額の【総計】を会社が一年間で集めてしまったら、会社は絶対に潰れないということはわかりますか?

Q)えっ?会社が潰れない??

A)はい。先ほどの、仕事があってもなくても必要な「給与」「賞与」「家賃地代」「本社系リース費」「光熱費」「車両関係費」「一般管理費」「借入返済」「各種税金」を全部足した金額を集め切ったら会社は絶対に潰れませんね。

Q)・・・・・、言われてみれば確かにそうですね。そのお金が会社にあったら、会社は潰れないですね。

A)その「会社が絶対に潰れないためのそれぞれの金額」の【総合計】を【限界利益】と呼んでいます。

Q)なるほど、先生が講演会で「限界利益を集める」とおっしゃっているのはそういう意味なんですね。

A)はい。まさに「会社を潰さない」ということは「限界利益を集める」ということと同じことなんです。

Q)なるほど・・・・。

A)ただし、この【限界利益】には、気をつけなければならない点が3つあります。

Q)・・・・・。

A)まず、一つ目は【限界利益】の金額は、どこにも書いていない、ということです。

Q)えっ?【限界利益】って、「決算書」に書いてあるんじゃないですか?

A)残念ながら、「決算書」というものは、一年の経営の活動の結果と、そこから「税金」の金額を導き出す仕組みなので、どこにもマネジメントに最も必要な【限界利益】っていう項目がありません。そのためには、まず「経営者」自らが、「決算書」と「元帳」をめくって、「本当に自分の会社で必要な項目と金額」を算出する必要があるんです。これは、経理担当者や会計事務所の人にお願いすることではありません。「経営者」自らが、自らの手で算出しなければなりません。なぜならば、「組織内へ伝達する」「経費の縮減を考える」「設備投資を決める」などというマネジメントで需要なシーンにおいて、【自分の言葉】で語る必要があるからです。「限界利益管理」を社内の「原価管理システム」として導入し、大きな成果を上げている組織のトップは全員がそうしたことを行いました。

Q)でも、経営者って数字に弱いじゃないですか。経理担当がやったほうが早いんじゃないですか?

A)はい。確かに専門家にやらせたほうが、早く、正確な数字が出せますが、しかし様々なことを「決断」するのは、経理担当者じゃありません。たとえ経理担当が奥さんや自分が信用している身内であったとしても、彼らが漏らす言葉はあくまで「意見」です。「意見」と「決断」は意味がまったく違いますね。例えば「経理部長がこう言っているので、今度からこうしよう」という言葉で組織が動きますか。異性を口説く時「私の友人がこう言っているので付き合ってください」という表現をしますか。組織にとって重要なことは【当事者意識】です。それは、経営者が組織の人に求めると同時に、経営者としての【当事者】であることの宣言が「限界利益算出」といっていいでしょう。つまり「社長の仕事」ということです。

Q)・・・。

A)2つ目は、算出した「限界利益の金額」を組織内の全員に知らせるということです。

Q)全員ですか?

A)はい。【限界利益】において、それを集めるプロセスは【全員】が関わりを持ちます。社長、役員、幹部だけではなく、全員がそれを知っておかなければ、集めることができません。特に、「パート」「アルバイト」と呼ばれる非正規雇用者に対して、このような「マネジメント系」の教育訓練を行うことはこれから先非常に重要なことになってきます。

Q)時間単位で働いている人にそんな事まで要求する必要があるんですか?

A)これは、その組織の「存続と発展」と関係することなのですが、【顧客から見た時】、対応してくれた人間が「正社員」であるのか「非正社員」であるのかは一切関係はありません。にもかかわらず、組織の都合で「呼称」や「待遇」によって、会社の方向ややり方にばらつきを持たせるわけにはいきません。よく、他の会社の社員さんやパートさんを見て「あそこの社員たちはよく働く。それに比べてうちは・・・」と嘆く社長の話をよく聞きます。実はその「よく働く」という背後にどれほどの「仕組み」や「教育訓練」があったかはわからないままに、社長さんたちはそんな言葉を漏らすんですね。理由は、組織の表面しか見ていない、ということです。自分の組織も他人の組織も、表面だけ見て羨んだり、蔑んだりしているんです。それは、【限界利益】を含めた「マネジメント」すなわち会社の成り立ちを考えていない、伝えていないということの証拠です。「他人の芝生は青い」という言葉がありますが、まさにその言葉の意味がここにありますね。

Q)つまり、組織の水面下での活動を想像しろ。その水面下の活動の中に【限界利益】という考え方が含まれているぞ、ということでしょうか?

A)そうです。組織を動かすときに「てこ」になるものはいろいろありますが、自分たちの給与、賞与に関わる事柄は、組織内において大いに説得力を持ちます。そして、「5S活動」の大きな目的である【生産性の向上】と【マーケティング】もこの「限界利益管理」から出てきた数字に影響を受けます。「5S活動」は「整理・整頓・清掃」という動きの中から【生産性を上げる】という成果を求めています「清潔・しつけ」という活動から、現在の顧客の満足度を上げ、新たな顧客を確保するという【マーケティング】の成果を狙っています。「生産性がどれだけ向上したか」ということは、「限界利益管理」の中で瞬時にわかりますし、自社の「顧客対応能力がどのように上がったか」もこの管理の中から判断ができます。

Q)[5S活動」と「限界利益管理」って密接に結びついているんですね。

A)そうです。よく「5S活動」をやって儲かるかどうかを尋ねる経営者の方がいますが、「5S活動」をやっただけで利益が出るわけではありません。「5S活動」というのは、組織に緊張感を与え、全員が参加することにより、「原価意識」を高め、一円を拾う、あるいは一円を落とさない仕組みを構築することです。その「原価意識」や「一円単位の管理」はこの【限界利益】という考え方があって初めて組織の中に浸透するのです。そのためにも「全員に」限界利益の解説と金額の説明が組織内で必要なのです。

Q)なるほど、講演でおっしゃる「5S活動と限界歴管理の親和性」という意味ですね。

A)3つ目は、【限界利益】は組織内の「共通言語」であるということです。

Q)「共通言語」ですか?

A)はい。組織内には様々な部署や部門があります。悲しいことにその部署や部門によって、考え方が随分と違いますね。例えば、工場の制作現場や建設の現場に従事する人たちからこんな言葉を聞いたことがあります。
「うちの営業たちは現場のことがまったくわかっていない。だからこんな安い金額で仕事を取ってきて我々に苦労させる!」
ところが営業サイドからはこんな言葉が聞こえてきます。
「うちの工場や現場は、能力がない。よその企業はこんな金額の中から利益を出しているというのに、うちの会社では利益が出ない、と言っている。馬鹿ばっかりいる!」
実は、「組織の中に利益に関する【共通言語】」がないのです。仕事を売上金額の大小で考え、利益を売上からの%(パーセント)で考えているものですから、これは安い高い、いい仕事悪い仕事、という抽象的な考え方からしか利益を想像できないのです。【限界利益】は売上推移や前年度対比といった抽象的なものから出しているわけではありません。自分たちの組織にはこれだけの【金額】が必要だ、という現実として向き合わなければならない厳然とした数字です。その数字を前にした時、取ってきた仕事の大小は関係なく、また利益率も関係ありません。そうなると組織の中でこうした話ができるようになります。
「この仕事から、○○円という限界利益を取るつもりだったが、それよりも大幅に限界利益が確保できた。何故だろう?」
「この仕事から、○○円という限界利益を出すつもりだったが実際にはその金額を下回った、何故だろう?」
この「何故だろう?」という言葉が、ほんとうの意味での業務改善活動なのです。単にスローガンとして「業務改善」を叫んだところで組織は変わりません。こうした具体的な活動結果から動き出さないと、組織は変わっていけないのです。

Q)つまり、利益を「売り上げに対する比率」や「業界や自社が平均的に持っている利益に関する%」ではなく、現実の金額で追いかけられ始める。全員が、そのために何をすればいいかを自分たちで考え始める、という意味でしょうか。

A)そうです。「5S活動」は実際に目に見えることですから、世代や男女や職位など一切関係のない【共通言語】です。「限界利益」も、実際に追いかけなければならない現実の数字なので、職位や立場や思惑とは一切関係のない組織内の【共通言語】です。このふたつの【共通言語】が、組織を大きく変え、成長のエネルギーになります。

Q)なるほど、2つの【共通言語】ですか。これはこれからの組織にとって非常に重要なことですね。イメージとしては【左手に限界利益を、右手に5Sを!】っていう感じでしょうか?

A)逆ですね。右利きなら、【左手に5Sを!右手に限界利益を!】ということでしょう(笑)目的は、「限界利益の確保」ですから。

Q)次回は【目標限界利益】と【限界利益管理】の実務についてお話ください。今日はありがとうございます。

A)こちらこそありがとう。

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tojiki: 桜の中を汽車は行く。JR特急「かもめ」で博多から長崎へ移動中。春の日差しの元、桜満開。しばし、腰痛を忘れ、車窓に目をやる。